【シンガポール=青木伸行】ミャンマーの民主化運動指導者、アウン・サン・スー・チーさんを党首とする国民民主連盟(NLD)は19日、連邦議会補欠選挙(4月1日)で争われる48選挙区の全候補者48人を決定した。釈放された政治犯も含まれ、民主化勢力は着々と選挙態勢を整えている。
「アウン・サン・スー・チー万歳!」。18日、最大都市ヤンゴン郊外のタニン。通りには数百人の支持者の熱狂的な歓声がこだました。選挙管理委員会の事務所内では、スー・チーさんが真剣な面持ちで、立候補届け出用紙にペンを走らせた。ヤンゴン南部のコームー選挙区から出馬する。
女性13人を含むNLDの候補者48人には、1988年の民主化要求運動を主導した「88世代学生グループ」の数人も顔をそろえた。例えば、禁錮65年の刑を受けた女性のサンダー・ミン氏や、ヒップホップのシンガーで3年以上獄中にあったゼヤ・トー氏などだ。
ゼヤ・トー氏は「有権者が、恐れることなく投票できることを望む」と、選挙が公正に実施されるのか、不安をのぞかせた。
果たして何人を議会へ送り込めるのか-。スー・チーさんは「国に仕えることを切望する者がたとえ1人でもいれば、国を動かせる」と語る。
■少数民族との火種
ミャンマーとの国境に近い中国雲南省の瑞麗市。この地で19日、前日に引き続いて、カチン族の武装勢力「カチン独立軍」(KIA)と政府との停戦交渉が行われた。
KIAが突きつけたのは「カチン族の自決権と、全民族の平等の権利」(KIA幹部)だ。こうした主張は、12日に停戦合意したカレン族の「カレン民族同盟」(KNU)を含め、政府が相手取る少数民族の10の武装勢力に共通している。
ビルマ族による少数民族の“支配”と迫害という根源的な問題を、「政治的に解決する決断」(同)を政府に迫っているのだ。
■残された政治犯
少数民族などには、全政治犯が釈放されていないことへの不満も強い。その数は、KNU関係者だけで69人ともいわれる。また、全ビルマ学生民主戦線(ABSDF)は、なお13人が獄中にあると非難している。
全国42の刑務所、109の強制収容所には、何人の政治犯が残っているのか-。テイン・セイン大統領は「いない」とし、コー・コー内相は未釈放の128人は政治犯ではなく、「刑法犯」だとしている。
一方、NLDは約300人、タイを拠点とする「政治犯支援協会」は1260人の政治犯が残っているとみる。「全政治犯」の釈放が終わったわけではないとして、スー・チーさんも引き続き釈放に取り組む。